桂ゆき展ーある寓話ー


東京都現代美術館で開催しています。4月28日日曜日行ってきました。NHK日曜美術館のアートシーンで紹介されていて興味を持ちました。
桂ゆき(1931年〜1991年)さんは紹介文によれば戦前と戦後を繋ぐ女性芸術家のパイオニア的存在であるとのことです。活動した東京での初めての包括的な個展として生誕100年を記念しての開催。そうなんです、「画家」と呼ばずに「芸術家」と呼んでいます。作品を観ると納得なのです。絵画ばかりでなく布やコルクのコラージュもあるんですよ。ユーモアに溢れています。
また経歴として戦後には児童書の「ノンちゃん雲に乗る」「おばあさんと子ブタ」「さるかに合戦」など装幀や挿絵も手がけました。








   


「抵抗」1952年。笑っているように見える女性の顔。
これを90度回転させると・・・・・








縦になると女性の顔は叫ぶように引きつって見えます。「固定観念に対する抵抗は常に心がけているつもりです」。制作のプロセスと見方を固定しないという絵画の可能性を示唆したのですね。
展示は横向きでしたので、体を折り曲げ90度首をかしげてみましたが、線の中に入ってしまい係員に注意を受けました(汗)。でここで画像を縦にしてみましたよ。確かに叫んでいますね。









「人と魚」1954年。第五福竜丸がビキニで環礁で被爆したことがテーマになっています。衝撃を受けた乗組員の表情を戯画的に表現している反面、荒縄のハチマキや魚は写真のように綿密に描いています。このような対比的な表現方法はモンタージュ技法というのでしょうか。












機知に富んだ作品といえばこれでしょうか。絵ではありません。大きな造形物です。女性の着物の裏地の紅絹(もみ)で覆っています。お釜は誰でも使ってきた生活実用品。よく見るととんがった角みたいな物が生えています。古くなった器物が捨てられ妖怪になった「付喪神(つくもがみ)」を表現しているんです。道具への感謝も忘れてはいけませんということですか。
これがまた個人蔵であることにも驚きます。お部屋に飾ってあるんでしょうか ?・?・?


桂さんは日本画から始め、女学校卒業後油絵に移行しました。風景写真をちぎって貼り付けたり、布や紙を貼り付けたり植物やコルクなど多用な素材を使っています。それに戯画的な表現が加わり個性的な独自の世界が広がりました。すこし漫画チックにも思えるユーモアがあります。
幼い頃ご両親は才能を見出され早くに日本画の先生に付けたということです。1930年代、そういう進歩的なご両親の環境は偉大な芸術家を産むことになるんですね。うちみたいにぼっ〜としている親ではあかんですね。まあ、子供にもそんな才能はなかったですけど。「仮面ライダー変身!」を真似るぐらいなもんでしたから。。。