「井戸茶碗」展 根津美術館


7日土曜日です。お茶を習う者には興味をかき立てられる展覧会です。高麗茶碗の井戸の由緒ある作品が一同に並べられるのですから行かないわけにはいきません。
「井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ」と副題がついており、「井戸茶碗とは、16世紀頃に朝鮮半島から渡来した高麗茶碗と呼ばれる茶碗の一種です。我が国では桃山から江戸時代そして現代でも、侘び茶の道具として高い賞玩をうけています。一見素朴な風情の茶碗が、なぜ戦国武将を魅了し、利休、遠州、不昧などの茶人の心を引き付けたのでしょうか。国宝「大井戸茶碗 銘 喜左衛門」をはじめとする井戸茶碗の名品約70点を展示し、その謎を探ります。」と説明があります。心浮き立つではありませんか。
一見、どれも同じに見える井戸ですが、当然のごとく形、釉薬の掛かり具合と出方など見れば見るほど違いが、個性があります。


特に名だたる井戸茶碗をご紹介しましょう。

大井戸茶碗 銘 「喜左衛門(きざえもん)」国宝です。
随一の名作として最も名高い茶碗。腰回りの轆轤目(ろくろめ)が残るおおらかな姿と言われています。渋めの枇杷色が釉薬も美しいです。枇杷色が井戸茶碗の特徴の一つでもあります。最初竹田喜左衛門が所持し、最後に松平不昧(ふまい)の手に。不昧の没後不昧夫人が京都大徳寺孤篷庵に寄進し、以来同寺に伝わっています。








青井戸茶碗 銘 「柴田」重要文化財です。
青井戸といっても青くないんです。一部が青みがかっているのでそう分別されます。大きく開いた美しい姿です。淡い枇杷色です。織田信長から柴田勝家が拝領したのが銘の由来です。高台際には梅花皮(かいらぎ)があります。根津美術館所蔵。









小井戸茶碗 銘 「忘水(わすれみず)」
忘水とは野中の人知れず流れる水のこと。山歩きをしていますとそんな流れをよく見かけます。細々としかし耐えることなく流れていますね。釉薬が優美に流れていることから名付けられたのかと、これは私の解釈です。かって小堀遠州が所持していました。現在は根津美術館所蔵。
大井戸と小井戸の違いは大きさによります。






信長、秀吉が君臨したこの時代、利休が提唱した「侘びの茶の湯」が盛んとなり、新しい茶の湯の中で井戸・三島・刷毛目などの高麗茶碗が好まれました。その素朴さが「侘び」の美意識にはまったのでしょうね。根津美術館を始め名古屋の徳川美術館、大阪の藤田美術館、東京の五島美術館、畠山美術館などからの名品の数々の出展。また個人蔵のものも多く、いかに茶人に好まれているかが分かります。


梅花皮(かいらぎ)とは、写真のように高台外側のヘラ削りの部分、釉薬が縮れている状態をいいます。井戸茶碗の見所のひとつです。この写真は大井戸茶碗 銘 「有楽(うらく)」です。梅花皮がほどよくついています。梅花皮の出方に関心を持つのは日本独特の美意識のようです。朝鮮では釉薬が溶けきっていなくて虫の卵がついているようだと嫌われていたとのことですよ。所変われば変わるものですね。私も最初はこの梅花皮に美意識は。。。慣れです(笑)。