名古屋食べ物考 味噌カツ


最近の味噌カツはいわゆるロース豚カツなどのように平たいカツにソースとしてかかっていますが、もともとは串カツが始まりだったのです。それも屋台で。
子供の頃、名古屋の私たちの最寄り駅 駅前には屋台がずらりと並び、おでんの屋台もあったでしょうが、ほとんどは串カツ屋さんでした。甘くした八丁味噌にドボンと付けて食べるのです。我が家ではおかずとして屋台に買いに行っていました。大皿を持ってお持ち帰り。そんな風景はよく見られたものです。
甘いお味噌タレが串カツの衣にとけ込んで大好きな食べ物でした。串カツにわざわざ「味噌」と言葉は付けませんでした。おでんもしかり。串カツもおでんもお味噌のタレが名古屋ではお約束だったので。
※写真は名古屋の居酒屋「當り屋」さんの食べログより



そういう下町の屋台の風景が、ある日忽然と無くなったのです。大人達の話ではそれは1964年の東京オリンピック開催のため。つまり外国人観光客を迎えるに当たって不潔そうな、街の景観を崩すようなものは排除したんですね。
開催地は東京ですよ、なんで名古屋まで。観光地でもあるまいに。まあしいていえば伊勢神宮への観光の拠点にはなるけれど。
屋台の消滅とともに串カツも消えてしまいました。それ以来串カツ我が家では普通のウスターソースに取って代わりました。

それがここ数年前から味噌カツがクローズアップされました。誰かが思い出したんでしょうね(笑)。それとも居酒屋などには細々と味噌串カツは守られていたのかしら。
味噌カツは豚カツ専門店で、あんな平たい豚カツにかけて食べるものではありません。昔を知る私にはとても違和感があります。やはり串カツ&ドボンですよ。それも日本の(いや名古屋の か)食文化です。
屋台を一掃させた当時の行政はなんだったのか。福岡では屋台文化が脈々と守られているのに。何も高級な会席料理だけが日本の食文化ではないと思うのです。だいたい日本人は屋台は好きなんです、江戸時代から続いているんだもの。
2020年の東京オリンピックにまたもやこんな勘違いの世界アピールは止めてほしいですね。