木版画家 立原位貫(たちはらいぬき)さんの木版画展


表参道にあるブティック matohu からお店での作品展示のご案内が届きました。立原位貫さんとはどんな画家なんでしょう? 「浮世絵版画の技法を独学で習得し、江戸時代に使われた紙や絵具や道具について研究を重ね、本当の復刻、復元を行ってきた唯一の作家です。」とあります。ましてや私の好きな歌川国芳の復刻版もあるとのこと、興味が湧かないわけがありません。
matohu のデザイナー 堀畑さんと関口さんとは2014年に出会い、交流を深められ matohu の5周年記念でお店を画廊にしての展覧会。
立原位貫さんは1951年名古屋生まれ。中学・高校はジャズと野球に明け暮れます。楽器はアルトサックス。21歳に東京に出てきて新宿「ピットイン」などでジャスサックス奏者として活動。しかし25歳の時、アンソニー・ブラックストンのサックスに衝撃を受けジャズを諦め、当時の実家四日市に帰ります。そして浮世絵版画に出会い、その美しさに魅せられただちに制作に入ったのです。
版画といえば、絵師・彫り師・色刷り師と分業であるわけですが、立原位貫さんはそれをひとりでこなしてしまうという偉業に挑戦。国芳・国貞・歌麿などの復刻版を次々に完成していきます。
40歳になりましてオリジナル作品の制作にも取りかかります。夢枕貘の「大江戸恐竜伝」の挿絵、連作「竹取物語」も制作するなど活躍の場を広げます。残念なことに2015年7月に永眠されました。64歳。鈴木春信の復刻を手がけ始めた時での逝去。
展覧会にはお嬢様がいらっしゃってお話しを伺うことができました。「父は版木を残さない人でした」。刷り終わると庭に捨て置いていたそうです。全てを独りでこなす作業は並大抵ではなく、お子様達も継ぐ人はなく。お嬢様には坊やがいらっしゃって「継がせようか…」とお母様に話したら、あんな大変な作業はもう立原位貫だけで十分。子にも孫にもさせたくないとおっしゃったとか。奥様としてのお言葉として立原位貫さんがどれほど苦労なさったか、それだけでもお察しできますね。
立原位貫さんの写真は購入した、山口県立萩美術館・浦上記念館で開催された図録より



作品は個人所蔵も多く、紹介は無断掲載となってしまいますので購入した絵はがきのみにいたします。





歌川国芳の復刻「伊達男氣性競 金神長五郎」





















オリジナル作品「風来壮日」
歌舞伎役者 片岡仁左右衛門の役者絵。
片岡孝夫時代に知り合い制作許可をもらって数点制作しています。
















オリジナル作品「あの日の夏へ」 散歩の道すがらにある芙蓉の花を描いたとのこと。








今回の展覧会の案内の封筒です。立原位貫さんが試し摺りを使って手作りした封筒を再現したものだそうです。
実際の作品は「不二」のタイトルで正方形に近いです。