映画「マーガレット・サッチャー」

メリル・ストリープが今年のアカデミー賞主演女優賞を取った映画です。だから観に行ったわけではなく、メリル・ストリープが好きだから。もうサッチャーさんとストリープがごっちゃになって、見終わって本物のサッチャーさんが思い浮かばずストリープが浮かんできます。それぐらいに演じきっていました。ネタバレになってしまいますが感想を。
オープニングにはっとさせられます。老いサッチャーさんがひとりスーパーでミルクを買っています。かっての英国首相が警備もなく一人で買物なんて共産国じゃあるまいしと思いますよ。でもそれは現在のサッチャーさんを描いているんですね。今は認知症にかかっているそうです。警護されていると言うより監禁されているような老婦人サッチャーさん。亡くなっているご主人のデニス・サッチャー氏との幻覚での会話、身の回りの整理から昔のことを思い出す演出で物語は進められます。
食料品を営む父は政治家でもあり、その姿をみて彼女も政治家を目指します。オックスフォード大学を出て保守党から下院議員選挙に立候補しますが落選。このとき支えてくれたのが実業家デニス・サッチャー。デニスに求婚されその時の返事が普通の妻や母になるつもりはない。政治を続けていきますがそれでよければ。それで君を選んだというデニス、カッコイイです。この若いデニスを演じた俳優ハリー・ロイドよかったですよ。
双子を設け育児と家事・仕事を両立させ、サッチャーは下院議員に当選。時を経て1975年には保守党党首に選出され、1979年の総選挙では英国史上初の女性首相に就任します。英国経済の復活やフォークランド諸島をアルゼンチンより奪還した功績もあり国民から圧倒的な支持をうけます。
しかし3度目の任期の終盤に全国民が平等に負担する「人頭税」導入の提唱で、国民の反発と党内分裂を招き辞任します。
完全な男社会の議会で堅い信念と強靱な精神力をもって、回りから孤立することとも戦いながら、自らの姿勢を貫いた女性首相マーガレット・サッチャーに改めて敬意を表します。やっぱり強い女性です。
そんなサッチャーですが、今、年老いて自らの人生を振り返って絶対に後悔はしていないでしょうが、いつもおどけてユーモアで自分を支えてくれた夫デニスを自分は大切にしてきたか、そして子供達へはどうだったかと振り返るサッチャーの切なさ。こういう思いはついて回るんでしょうね、特に女性は。
なんといってもこの映画の勝因は、メリル・ストリープの演技力とメイク。メイクも賞をもらっていますね。
ストリープは数年前「マンマ・ミーア」で歌って踊って弾けたお母さんを演じました。それも素敵でした。どんな役でも演じきれる女優さん、まさに今の時代の世界トップスターです。
監督はフィリダ・ロイド。「マンマ・ミーア」の監督でもあります。