2013年9月の俳句

人去りて化粧直しや秋の海

海水浴で賑わった夏の海も終わり、澄み切った青い空と深い色をした秋の海に季節を感じます。季題は秋の海。



夕月夜窓辺に母の帰り待つ

季題は夕月夜。新月からしばらく宵方だけ月のある夜をいいます。日も暮れて心細くなった幼い息子。あの頃の息子達を抱きしめたい。



難しき生き方はせぬ鰯喰ぶ(たぶ)

普通が良い。何も好きこのんでややこやしい方に行かなくても。季題は鰯。



人肌を恋ふてため息夜の長し

恋句を詠んでいきたいと思っていますが、なにせ現在進行形の恋はなく遠い遠い過去をほじくり返しています。季題は夜長。



従兄をや糸瓜(へちま)と嘆く叔母のゐし

季題は糸瓜糸瓜は野暮でつまらない人のことを例えたりします。そういいながらも叔母は従兄のことが可愛いのです。


9/19は正岡子規糸瓜忌です。東京根岸に住んでおりましたが子規記念館として今も保存されています。肺結核と腰部脊髄炎を患っておりまして、庭には糸瓜棚があります。糸瓜の蔓を切って液をとり飲むと咳止めや痰切りに効くのです。子規の辞世の三句は糸瓜を詠んだ句です。
   糸瓜咲て痰のつまりし仏かな
   痰一斗糸瓜の水も間に合わず
   をとヽひのへちまの水も取らざりき
闘病生活は痛ましいものでしたが辞世の句は、死を悟ったようでじめじめしていませんね。死に対する覚悟が出来ていたから詠める句でしょうか。