2016年6月の俳句

梅雨に入るペッパーミルの重き音 (つゆにいるぺっぱーみるのおもきおと)

この時期胡椒粒も湿って、引いてもからからとはいきません。季題は入梅(梅雨入り)



柿の花四角四面に生きてゐし
(かきのはなしかくしめんにいきていし)

季題は柿の花。いつの間にか咲いていつの間にか散ったり実にそだったり、小さな目立たない四角な花ですね。生真面目に生きる…誰も私のことを詠んだ句とは思われないでしょう。はい、ご明察。大切な知人を浮かべて詠みました。



黴臭くここ数日の不機嫌さ (かびくさくここすうじつのふきげんさ)

体調を崩された方が思うように体が動かなくて、怒りっぽい。こちらが気を遣うも受けとめない。あぁ、面倒くさい方だと思いながら、そうよ、黴のこういう時期だから、その所為よと。季題は黴。



焼き鮎の骨を上手に父の抜く (やきあゆのほねをじょうずにちちのぬく)

父は食にうるさい人でした。母は大変でしたが、美味しいものを食べさせてもらえたありがたさはあります。塩焼きの鮎、「こうして頭を持って身を箸でほぐして、しっぽを切って、さっと頭から抜くんだ」とそれは見事に骨が抜けました。それを見るのが好きでした。何度やっても私はうまくいきませんでした。いまだに出来ません。鮎の時期になると思い出す父の手先です。季題は鮎。



怠らず赤紫蘇畑の間引きかな  (おこたらずあかじそばたのまびきかな)
紫蘇匂ふ寝かしつけをる母の手に  (しそにおうねかしつけをるははのてに)

季題は紫蘇。赤紫蘇の畑を持っているおばちゃんが「こうして間引きを根気よくしてやらないといい紫蘇にそだたないのよ」と作業をしながら話してくれました。

梅干し作りに昼間赤紫蘇をしっかり揉んだ母の手、赤く染まっています。そして私を寝かせ付けるのに布団の上からねんねしなと子守歌を歌いながら優しく肩を叩く。

今月の兼題は昭和の父母を思い出すこととなりました。