2014年4月の俳句

亀鳴けば貴男のもとに行きませう

季題は亀鳴く。実際に亀は鳴きません。「夫木(ふぼく)集」にある藤原為家の「川越のをちの田中の夕闇に何ぞときけば亀の鳴くなる」という歌が典拠とされ季題となったようです。
絶対聞けない亀の鳴き声、気に沿わない男性に言い寄られた時のお断りの言葉にいかがでしょうか。かぐや姫のように。



春陰(しゅんいん)の心細さや便り待つ

季題は春陰。春の曇りがちな天候です。いつ届くのか、重く暗い曇り空が一層不安にさせます。



方程式催眠術の目借時(めかりどき)

数学は苦手でした。女教師の声にy・x・√が催眠術の暗号になり寝こけてしまう時間でした。季語は(蛙(かわづ)の)目借時。春はうつらうつらと眠くなりますね。蛙に目を借りられるからといい、このころの時候の眠気をいいます。



何事も気の持ちようよ豆の花

季題は豆の花。蚕豆・豌豆の花を総称していいます。蚕豆の花は白や薄紫、豌豆の花は赤紫や白色がありますね。そして花はうまく咲かず心配だったけれどちゃんと立派な実とつけてくれたのです。いろいろ悩んでも気の持ち方でいかようにも。そんな心境を詠みました。これは季題が豆の花だからいいと先生より評をいただきました。※後ほど季題について述べたいと思います。



墨堤に春闌の水あかり  (ぼくていにはるたけなわのみずあかり)

隅田川の堤、そう向島あたりの堤に春の川の流れ眺め、春の風を受けながらたたずむ。「墨東綺談」のお雪になったつもりで、、、なんちゃって。   季題は春深し・春闌




※季題(季語)について

作句するにあたっていろいろ気をつけなければならないことがあります。「や」「かな」などの切れ字は一つだけ。一つの句の中に切れ字を二つ使ってはいけません。また季重なりといって季題を二ついれることも避けた方がいいです。
そしてなんといっても季題が立ってなければいけません。それだけ季題は大切です。そのために歳時記があります。歳時記で季題の意味するところを理解します。とくに季題に心象的な意味合いを持たせるときには、その季題のふくらみの延長線上にあるのがいいです。
そのためには詠む方も鑑賞する方も季題をよく理解していることが大切なんです。

俳句をやるにあたって歳時記は読まないという方がいるようですが、やはり歳時記は読みましょう。難しく構えないで短編小説を読むような気持ちで、私など携帯用を携えていて電車の中でも読んでいます。飽きれば止めて、眠くなったら止めて。もっと気楽に身近に歳時記に接していただきたいのです。案外おもしろいですよ。いろいろな発見もありますしね。