2014年11月の俳句



綿虫や漂うといふ力持つ
(わたむしや
  ただようという
    ちからもつ)







季題は綿虫(大綿、雪虫)。体はとても小さく綿くずが飛んでいるように見えます。
都会でも見られます。さっと飛ぶわけでなくふわりふわりと漂っています。
飛び回ることだけが力があることではなく、漂うのも力かと。生き方を重ねてみたりして。




新海苔と太き黒文字艶めける  (しんのりとふときくろもじつやめける)

海苔屋さんも新海苔には思い入れがあるのか、帯封に墨で黒々としっかり書いてありますね。
新海苔の艶の良さを示すかのように。季題は新海苔。




自覚なき老いに毒あり神の留守  (じかくなきおいにどくありかみのるす)

季題は神無月(神の留守)。神が出雲に行かれたので老い人も心が落ち着かないのか。
早く帰ってきて!
えっ、そんなの関係ない? キャッ!!



顔赤くにほんざるにも冬来る  
(かおあかくにほんざるにもふゆきたる)

ニホンザルは秋冬 交尾期で、普段に増して顔が鮮やかに赤くなるそうです。春から夏に出産。季節の良いときに出産するんですね。季題は立冬(冬来る)。






言ひ足りぬ私でありし帰り花  (いいたりぬわたしでありしかえりばな)

そう、あのときもう一言言えば、仲違いせずに済んだかもしれない。そんなことを今更思います。
季題は帰り花。初冬に時ならぬ咲く花です。人の忘れた頃に咲くので忘れ咲きとも言います。