懸想文売り

ヴァレンタインデーの会話として聞けば  稲畑汀子

と、汀子さんも詠んでいますが、全く同感で、なぁ〜んもヴァレンタインに関係のない暮らしでござりまする。バレンタインの日が季題になっているのですよ。いくら世相とはいえ季題にまで持ち上げることもないのにね。



まぁそれはともかく、懸想文売りのお軸です。
ご紹介をすると懸想文(けそうぶみ)というのはラブレター。絵のように布で顔を包み烏帽子をかぶり水干(すいかん)姿の男が、町の男女の依頼に応えてラブレターの代筆をしたそうです。水干姿の男性は身を隠す必要があるわけでして、それはお公家さんたち。深い教養はあってもそんなに暮らしは豊かではないので、文字の書けない庶民に代わって文を書いたり和歌を詠んだりしてあげていたのです。代筆して届けるのはいいけどお相手が読めないと代読もしてあげていたのだそうです。お公家さん達のアルバイトといえるでしょうね。でもそのお陰で庶民たちは想いを伝えられたのですから粋なバイトとも言えますね。

もちろんその昔にバレンタインデーがあったわけではなく年中懸想文売りはいたと思います。そんな風情のある時代をちょっと偲んでみました。またこの掛け軸の絵も素敵でしょ。