久しぶりの浅草

nswさんが「馬賊の焼きそばが食べたくなった」と書いていらっしゃるのを読んで、「そうだ、久しく浅草に行ってない。馬賊にも行きたい!」と思って日曜日出掛けました。ちなみに「馬賊」は浅草メイン通りからはずれた中華屋さんです。手打ちの麺が美味しいのです。

浅草について先ずは向島へと大川(隅田川)の川べりを歩きます。この散歩道が好きです。

大川の流れにほのと春香る

いにしえの人々が目にし舟遊びし愛でた大川。そんな人々を思い浮かべながら川に沿い川の匂いを嗅ぎ歩くのが好きです。




目指すは「長命寺桜もち」。一年中桜もちしか扱っていません。餅は小麦粉を水でのばして焼いたもの。
HPにこんな小咄が載っているのでご紹介します。







以前、小沢昭一さんがお見えになったときにこんな小噺を教えてくださいました。
「ある人、桜もちの皮(葉)ごと食べるを見て、隣の人、
旦那、皮をむいて食べた方がいいですよ。
あ、そうですかとそのまま川の方をを向いて食べた」
川を向いて座れば、大川のゆったりとした流れと桜並木。どうぞ、そのまま春の日永をのんびりお過ごしください。
きっとそれが、桜もちの一番おいしい食べ方でしょう。

なぜに「長命寺桜もち」にこだわるかというと、味ばかりではなく正岡子規さんを偲んでいるのです。なんて大げさですが、伊集院静さんの小説「ノボさん」に正岡子規帝国大学に在学中の夏、ここ向島に友人と避暑に来てしばらく滞在するのですが、それがこの餅屋の二階なのです。大川はその頃、涼風を運んでいたのでしょうね。避暑といってももちろん文芸の創作活動の為です。
子規の生涯で女性が登場することはないのですが(母・妹を除いて)、この餅屋の娘 おろくに憎からず思ったようです。それが恋なのかどうか自分でもよく分からなかったようです。でもおろくといると楽しかったようです。お茶を持って二階に上がってくるおろくを心待ちにしていました。しかしこの淡い恋は秋の訪れと共に終わります。
なんだか、子規を思うに付け、そんな女性に対しての心持ちもあったということが嬉しいのです。決してマザコン・シスターコンではなかったと。


小説を読み、登場する餅屋は「長命寺桜もち」に違いないと思い、それ以来浅草に来ると必ず足を延ばします。
ねっ、案内板に「正岡子規 仮寓の地(「長命寺桜もち」とありますでしょ! 







桜もちを買い、帰りは大川の反対側の川べりを歩きます。小沢さんの話じゃないけれどここで包みを解いて川を眺めて桜もちを食べたいところですが…土産の包みを開けるのも楽しみに待つ夫に悪いかなとじっと我慢(やさしいおなごですけんの、ケッ!)
もう浅草は観光客で大にぎわい。浅草寺浅草神社は手を合わせるだけにして六区の方へ。ポッピー通りも凄い賑わい。
さて、あとは「馬賊」の焼きそばを食べて「浅草志乃多寿司」を買って帰りましょう。
馬賊」では五目焼きそばを頼んで、ビールを飲みたかったのですが大瓶しかない。さすが昼間から大瓶はきついので我慢。焼きそばも盛りがいいのでこれだけでお腹いっぱいです。ここまでは観光客はやってこない。ありがたや。 


はい、今日の収穫物 長明寺桜もちと浅草志乃多寿司です。濃茶を台所で点てて桜もちをいただきました。寿司は夕ご飯に。 
う〜ん、お寿司はご飯がちょっと堅めになったかな。それとも私の歯が弱ってきたのか。