2011年5月の俳句

余花の風あるかなきかに匂ひたち

季題は余花(よか)。初夏になってもなお咲き残っている桜をいいます。さすが満開のときとは違って咲く花も少し。風が運ぶ匂いもかすかです。


松蝉の声にせかるる日ざしかな

季題の松蝉は晩春、初夏に松林などに鳴き出します。春蝉とも呼ばれています。他の蝉より早く鳴き始め、もう夏の到来を告げているようで、日ざしも鳴き声にせかされてだんだんと強くなっていくような、そんな景です。


猪牙舟に葉桜影を落としをり

猪牙舟(ちょきぶね)は細長く舟首がとがった屋根のない小さな和舟です。江戸時代に隅田川や深川で使われた、いまでいう水上タクシーでしょうか。時代劇にしばしば登場しますね。吉原通いによく使われたそうです。花の盛りには猪牙舟の出番も多かったのですが葉桜となった今はぽかりぽかり揺れる舟に葉桜の影も揺れている風景です。季題は葉桜。


腕を出す躊躇の歳や更衣

詠んだままの心境です。夏の衣服に替わるのですが、半袖やノースリーブになって二の腕があらわに。歳相応に太くたるんだ腕をだすのが辛いですよ。細く華奢な腕は遠い昔のこと。なんで主婦の腕って太くたくましくなるのかしら。季題は更衣。