2012年3月の俳句

一振りの鍬に消さるる斑雪(はだれ)かな

斑雪は春の雪がうっすらまだらに積もっている状態で季題です。斑雪一面の畑もそろそろ耕す頃となった情景を詠みました。


邪気払ふ鈴の音にも椿落つ

神社でお参りするとき鈴をならしますね。鈴は邪気を払うのだそうです。静かな神社のそんな鈴の音に椿が反応する様子です。季題は椿。


老いぬるや急(せ)くこともなく雛納め(ひなおさめ)

お雛様は早く片付けないと娘の婚期が遅れると、3日の晩には片付けているお家も多いと思います。老夫婦になって飾るお雛様。でももう急いで片付ける必要もなくなりました。季題は雛納。


若鮎の跳ねて少女の肢体かな

3月に川を遡ってくる小鮎です。鮎自体上品で華奢な魚ですが若鮎となると更に繊細な感じがします。少女の柔らかくのびのびする体を想像させまぶしささえ感じます。季題は若鮎。


けんけんと暮色に響く夕きぎす
季題の雉(きじ・きぎす)は雑木林や草原に棲む日本にだけいる鳥です。春になるとけんけんと鋭く鳴いて雌を呼びます。なかなかあわれな声です。