2015年3月の俳句

苗札の高さいつ越すちいさき芽 (なえふだのたかさいつこすちいさきめ)

季題は苗札。早く芽が出よ、早く大きくなれと、楽しみですね。咲くとどうも違うなとあっちの苗札と取り違えちゃった?という失敗もあったりして。そんなおっちょこちょいは私だけ?



居眠りの父はそのまま春の雷  (いねむりのちちはそのままはるのらい)

雷と言えば夏ですが、春に鳴るものもあります。夏のようにドカドカビシャ〜ンと激しくなく、一つ二つ鳴って弱いのです。季題は春雷(しゅんらい)。



多摩川の無念の魂や涅槃西風  (たまがわのむねんのたまやねはんにし)

季題は涅槃西風。涅槃会(釈迦が入滅した日 旧暦の2月15日)の前後に吹く西風をいいます。西方浄土からの迎え風といいますが、寒さが戻るともいわれます。上村遼太君を悼んで。



野に出でばハーブの女王蓬萌ゆ  (のにいでばはーぶのじょおうよもぎもゆ)

兼題に蓬と出て調べますと、ヨモギは飲んで良し、付けて良し、浸かって良し、嗅いで良し、燃やして良しの5拍子揃った薬草であると。私は草餅のためにだけある草と思っておりました。無知は恥ずかしいこってす。日本古来からのハーブだったのだ!



雁風呂や木羽のはじける音哀し  (がんぶろやこばのはじけるおとかなし)

季題は雁風呂。青森県外ケ浜では春に雁が帰った後、海岸の木片を拾いお風呂を焚いて雁の供養をする風習があったそうです。雁は秋に渡ってくるときに海上で羽を休めるために木片をくわえてきて、春に帰るときにその自分の木片を拾ってくわえて帰るそうです。残された木片はつまりはその間に死んでしまった雁の数ということになりますね。村人は供養のためその木片で風呂を焚き、旅人などに風呂を振る舞ったといいます。
なんと日本人は優しく慈愛深いことでしょう。その風呂はどの風呂よりも温かったでしょうね。
余談ですが、大白鳥は休むことなく飛び続けて一気に帰るそうですよ。