伊勢半本店 紅ミュージアム


紅花の染め物に俄然興味を持った私、港区南青山にあります「紅ミュージアム」に行ってきました。入口には「キスミー」の文字も。あの化粧品のキスミーさんですわね。それもそう、伊勢半さんは1825年の創業で伝統的な「紅」を作った、口紅のメーカーさんなんですね。以来当時の製法そのままに紅を作り続けているとのことですよ。




それで、紅の伝統的な製法をちょっと触れておきたいと思います。

紅花(べにばな)はむかし、末摘花(すえつむはな)と呼ばれていました。黄色から赤と色を変えるキク科の1年草。古くから南西アジア北アフリカを中心に広く栽培されていました。シルクロードを通って中国そして日本へ伝わりました。日本でといえばなんといっても「最上紅花」が有名。山形県県花であります。
朝露を含んだ刺がまだ柔らかい早朝にひとつひとつ丁寧に花びらだけを摘んでいきます。
その花びらを水洗いし3日ほど発酵させ赤色を深くします。


手揉みします。揉みながら黄色い色素を洗い流し、日陰で朝・昼・晩と水を打ちながら発酵させる。発酵が進むにつれ花弁の赤味が強くなるのです。








発酵した花弁をまさしく餅つきのように臼に入れてつきます。
写真のように巨峰の大きさぐらいの団子状に丸めて、ぎゅっと潰し水分を絞り出します。

天日干しにして紅餅の完成。保存が良ければ何百年も持つそうですよ。この紅花餅が山形から出荷され、京都の反物染め物屋さんや口紅の製造屋さんに売られたんです。確かに乾燥させれば日持ちもするし運搬も軽いでしょうしね、先人の知恵ですね。



このあとそれぞれ反物になったり口紅になったりするわけですが、訪れたところは伊勢半さんのミュージアム。口紅の作り方といきましょう。熟練の紅匠により真っ赤が玉虫色になるのです。


紅餅を水につけ戻しアルカリ溶液と酸液を加え、紅液を作ります。紅液に「ゾク」と呼ばれる麻の束を浸し、赤色色素を染め付け、ゾクを搾り赤色色素を取り出します。

羽二重をかけたセイロに赤色色素を流し入れ余分な水分を切ります。羽二重の上に残った泥状の紅を集め紅箱に入れて保管します。





器の内側に適量の紅を紅箱から取り、刷毛でムラなく伸ばします。
どうです、自然乾燥させればこんな綺麗な玉虫色になりますよ。こうして商品にして伊勢半さんは商いをしてきたのです。






小さなミュージアムですが紅花の歴史・製造などの資料展示もありますが、口紅を実際試めさせてくれるので、スタッフさんに付けていただきましたよ。
すごく自然な色で薄く付ければピンクに重ねれば赤い色になります。顔になじみます。やはり自然色だからですね。
はい、小町紅「手鞠」を買いましたよ。翌日早速使ってみました。いいんだわこれが! 紅筆を少し水に濡らし器の玉虫色をちょっちょっとなでます。そして唇に塗っていきます。普通の口紅のように油が入っておりませんので、さらりと唇につきます。コップにも紅跡が残らないんです。


すっかり私のお気に入りになりました。普段使いには勿体ないのでお出かけの時に使うとしましょうか。 案外ケチなんざますの(笑)

※画像は伊勢半ミュージアム、他の画像をお借りしました