2020年10月の俳句

鳥渡るわが町の空貸し切りて  (とりわたる わがまちのそら かしきりて)

 都会ではまず鳥が渡ってくることはないですが、東北に旅行したときそんな光景を目にしました。毎年楽しみにしていらっしゃるその町に人には「空貸し切って」という思いかと。季語:鳥渡る。



切手シート切り取り線の秋湿り  (きってしーと きりとりせんの あきじめり)

 事務所では切手はシートで買います。秋の長雨で切り取り線がじとっとしていて、スムーズに切れません。それにつけても、昔の切り取り線はすっと切れたような。最近は紙がしっかりしてきたのか。季語:秋湿り。



言い切りてすぐに迷いの月の雨  (いいきりて すぐにまよいの つきのあめ)

 断言しておきながらすぐに「良かったかな・・・」と自信がない臆病者でございます。季語:月。



仕舞ふ前すこし仰いで捨団扇  (しまふまえ すこしあおいで すてうちわ)

 もう団扇も片付けていいでしょうと、ホコリを払って、ちょっと仰いで、よしよしと。季語:秋団扇(捨団扇)。秋になって大方かえりみられなくなった団扇のことです。



過疎村に紅緋雄黄カンナ燃ゆ  (かそそんに べにひゆうおう かんなもゆ)

 10月になってもカンナは咲いています。花の時期が8~10月と長いですね。まっかか・まっききの色鮮やかさが、過疎村に対比して、見事ながらもそれゆえに一抹の寂しさも。季語:カンナ。