映画 「道〜白磁の人〜」

去年の今頃です。大阪の東洋陶磁器美術館で特別展「浅川兄弟の心と眼」で朝鮮の白磁の素朴な美しさを知りました。

この映画は浅川兄弟の弟さんの巧さんの半生を描いた作品です。先に朝鮮陶磁器の美しさに注目していた兄(伯教)は朝鮮へ渡っており、その兄を慕い影響を強く受けていた巧は、1914年朝鮮に渡って朝鮮総督府の山林課林業試験所で働きはじめます。当時の朝鮮は日本の植民地で統治下にありあからさまな人種差別を受けていました。同じ人間として朝鮮の人たちと真に接したいと朝鮮語を習ったり朝鮮の衣装を着て進んで朝鮮の社会に入っていきました。林業試験所で働く朝鮮人のイ・チョンリムと荒廃した山を緑に戻すために、山々を歩き五葉松の苗を育て友情を育んで行きます。二人の友情がこの映画の大きなテーマです。
時代も時代、二人の友情も周りからは白い目で見られたりしますが理解し合い信頼し合いお互いを認める二人の絆は深いです。
兄・伯教と民芸運動家の柳宗悦と朝鮮の陶磁器や古美術品を収集し朝鮮民族美術館の設立にも尽力しました。しかし巧は病気にかかり40歳という若さで亡くなります。


巧を演じた吉沢悠とイ・チョンリム役のペ・スビンは良かったですよ。母親の手塚里美のいいです。ただねお兄さん役の石垣佑磨は貫禄がなかったですね。柳宗悦の塩谷舜(二股男優という偏見をとっぱらっても(苦笑))、当時の文化人としての知性が感じられませんでした。ちょっとキャスティングミスと思います。
監督は高橋伴明さん。

巧さんのお墓は韓国の忘憂里という公園墓地にあります。記念碑には、ハングルでこう刻まれているそうです。
  「韓国の山と民芸を愛し、
   韓国人の心のなかに生きた日本人、
   ここ韓国の土になる」

友情は結局の所、人と人。民族を超え政治的な背景も超え惹かれ合うものですね。記念碑に刻まれた言葉を韓国の林業に大きな寄与は果たした浅川巧への尊敬と受け止めることが出来ます。そういう日本人がいたことを私たち日本人はあまり知りません。この映画をきっかけに沢山の人が知ることができるといいと思います。