2015年11月の俳句

また一軒閉じる店あり秋の行く  (またいっけんとじるみせありあきのゆく)

後継ぐ人もなく、またもろもろの事情で閉店する店が後をたちませんが、シャッターが降り、長年のご愛顧を…と紙が貼ってあるのは、秋にはことさら寂しさを増します。
季題は行秋(ゆくあき)。秋が過ぎ去り、虫の声はとうに聞こえなくなり、水も冷たさを増し、冬の足音が聞こえてきます。



晩景の松島を背に牡蠣すする  (ばんけいのまつしまをせにかきすする)

塩竃の義父のお墓は松島にあります。 松島の駅付近にはこの時期ですと牡蠣を食べさせるお店がずらり並んでいます。お墓参りをしてオイスターバーに立ち寄りました。牡蠣好きの私は生牡蠣を殻からすすっていただくのが大好き。松島湾はまさに暮れゆかん風景で美しかったです。
季題は牡蠣。「牡蠣は広島産です」と正直にうたっているお店もあります。復興はまだまだなのでしょうね。しかし店主の話に寄りますと広島の牡蠣も韓国の牡蠣も松島の牡蠣が元だそうですよ。



11/17は目黒区にあります目黒不動尊とその近くの林試の森公園へ吟行でした。ちょっと前まで吟行は苦手でしたが、最近ようやく写生しながら詠めるようになりました。その吟行から三句。


恋悲し木の葉しぐれの比翼塚
(こいかなしこのはしぐれのひよくづか)

目黒不動尊の前に祀ってある白井権八と遊女小紫の悲恋を悼んでの比翼塚。比翼塚とは好きあって死んだ男女、仲の良かった夫婦を合葬したお墓や祈念碑のことです。白井権八の話は歌舞伎や浄瑠璃となり、侠客の幡随院長兵衛が駕籠の中から「お若えの、お待ちなせぇ」と権八を呼び止める科白が有名ですね。
季題は木の葉雨(このはあめ)。雨の降るように散る葉をいいます。
※写真はHPからお借りしました。スマホで写したのですが残っていない。なんで? と首をかしげるけれどヘマをしたんですわね



林試の森公園は昔林業試験場でした。それで草花というより樹木が多い公園です。それも高く大きな木が多いです。

朴落葉空うらがへしうらがへし  (ほおおちばそらうらがえしうらがえし)

朴の葉は大きいですね。葉一杯に空をうつして散っておりました。小さい葉ですとこの表現は難しいと思います。大葉であるから詠めます。
季題は落葉。



飯桐の赤き実高く冬ぬくし  (いいぎりのあかきみたかくふゆぬくし)

吟行のこの日は小春日和の暖かな天候でした。冬の空は澄んで高いですね。20mはゆうにあると見える飯桐の木、下には枝が無くてっぺんにたくさん実がなっていました。実は南天に似ています。
季題は冬暖か・冬ぬくし。冬になって暖かい日のことをいいます。