2015年10月の俳句

期も新た披講の声に秋の声  (きもあらたひこうのこえにあきのこえ)

通っている俳句のスクールは10月から期が変わります。期も気も新たにと詠みました。新しい期を迎えての挨拶句です。披講とは俳句を読み上げることです。季題は秋の声。秋の気配を感じることです。



休耕田鳴らぬ添水の朽ちゆきて  (きゅうこうでんならぬそうずのくちゆきて)

季題 添水(そうず)はししおどしです。は今や庭の景物となり風流さを演出しておりますが、そもそもは田畑を荒らす鳥獣をおどす仕掛けでした。作りも素朴なものでした。



手鏡に映るくちびる薄紅葉  (てかがみにうつるくちびるうすもみじ)

老いてきますと口紅も真っ赤はきつくなってしまいます。ほんのり薄いのがよろしいようで。季題は薄紅葉。紅葉し始めのころをいいます。



言いたきをぐっとのみ込む温め酒  (いいたきをぐっとのみこむぬくめざけ)

陰暦9月9日から酒を温めて飲めば病なしと言い伝えがあります。これを言えば角が立つ、それはこらえて酒に流しましょう。気の弱い私はそれで酒に強くなったのです(う? 誰も信じない)。季題は温め酒。



久女縫う思慕も縫い込む菊枕  (ひさじょぬうしぼもぬいこむきくまくら)

季題 菊枕は菊の花を干して乾燥させ、それを中身として作った枕です。どれほどの菊の花びらが必要だったでしょうね。香り高く邪気を払うと言い伝えられています。
杉田久女は明治〜昭和を生きた(1890年〜1946年)近代俳句 最初期の女性俳人です。秀でた俳人であったのですが、夫との不和、師であるホトトギス高浜虚子への想い、俳句への熱心さは度を過ぎ、虚子に疎まれることとなってしまいます。毎年のように菊枕を作って虚子に贈っておりました。ホトトギスから破門され、自分の身の不遇等、最後には精神に異常を来します。
私は久女の句が大好きです。彼女をひいき目で見ると、虚子はもう少し大きな心で久女を受けとめてやってもよかったのにと思います。
久女に関しての本は 坂本宮尾 「杉田久女」  田辺聖子 「花衣ぬぐやまつわる……」を読みました。松本清張の「菊枕−ぬい女略歴−」もありますがこちらは読んでいません。