五島美術館では「時代の美」と題して4部にわけて所蔵品の展示会をしています。この時期は第3部の桃山・江戸編。武将の活躍した桃山時代。肖像画や手紙、茶の湯のやきものなどを展示しています。なんといっても茶道具を観賞したくて行きました。
五島美術館は東急電鉄の五島慶太氏が蒐集した美術工芸品の美術館です。古写経コレクションから始め、中世の僧侶の書(墨跡)と手を広げ、やがて茶の道へと移っていきます。ですから茶道具も重要文化財となっているものを多く所有しております。
初代長次郎の黒楽茶碗・銘「千声」。なにかこう暖かみのある形ですね。きっとお人柄がでているのではないかと思います。
同じく長次郎の赤楽茶碗・銘「夕暮」。夕焼けの黄色朱色のグラデーションが美しいです。
楽家三代目道入(通称:のんこう)の黒楽茶碗・銘「三番叟」。長次郎の黒楽に比べると随分黒の色に光沢があって綺麗になってきています。釉薬に工夫をこらしてこういう黒がでるようになったとか。
楽焼は全て手捏ね(てづくね)で成形します。ろくろを回さないで作ります。形が均一にはなりませんがそれも観賞の味のひとつです。
黄瀬戸平茶碗・銘「柳かげ」。植物文様のきれいなお茶碗でした。黄瀬戸は好きです。
古伊賀水指・銘「破袋」。焼成中に割れた作品を当時の茶人達は好んだそうです。これは見事な割れが入っています。写真だとダイナミックさが伝わりませんが寸法も大きく圧倒されます。
中興名物 瀬戸肩衝茶入・銘「月迫」。茶入は濃茶を入れます。小堀遠州が所有していました。金気色の地釉に黒釉のなだれが美しいですね。
亀甲蒔絵棗。棗は薄茶を入れます。蒔絵棗としては最も古い作例だそうです。
その他にもお茶碗では鼠志野の「峯紅葉」や黒織部「わらや」など素晴らしい作品が一杯でした。
自筆の手紙も掛け軸にして保存されています。秀吉がねねやちゃちゃに送った自筆の手紙、ちょっと感動です。
こうした古い美術品が何人かの手を渡り大事に保管されてきたということが、古美術を尊び感動を受ける要素です。よくぞ大切に守ってきてくださった。そのお陰で今現在、そして後の人もまみえることができるのですから。
私の茶道の先生はご両親が茶人で相当なお道具をお持ちでいらっしゃいます。受け継ぐときにお母様から「自分のものだと思ってはいけません。お預かりしているのだと思いなさい」と言われたそうです。
素晴らしいお言葉です。名工の作品を所有していることを偉ぶらず真摯な気持ちで接していらっしゃいました。
よく茶道具は解説書などに歴代の所有者たちの名が書いてありますが、そういう方々の手に渡って大切に保管されたことも価値としてみなされるのです。
いやいやなかなか奥が深いですね。
※写真は五島美術館のHPから。「柳かげ」は購入した絵はがきを撮しました。