今週のお題 「おすすめの本」

渥美清の俳句がのった「風天 渥美清のうた」。森英介著です。俳句の兼題で「虹」を検索していたら、
「お遍路が一列に行く虹の中 」
という句が目にとまり、作者は渥美清/俳号は風天と知り、へえ、あの寅さんが素晴らしい句を作っていると興味を持ち読みました。句風は定型にとらわれず自由自在。無季語、自由律俳句もあれば、季重なり(1つの句の中に複数の季語があること)」の句もあります。そうかと思えば5・7・5できっちり収まる句もあります。 枠にとらわれない自由奔放なのびのびした所が魅力です。
「うつり香の浴衣まるめてそのままに」
という色っぽい句もあります。
「少年の日に帰りたき初蛍 」
なんだか優しい眼差しが感じられる句ですね。

渥美清は若い頃結核を患って療養所でしばらく過ごすのですが、その時共に過ごした7歳年下の患者さん(梅村さん)とは仲が良く名が売れてからもお付き合いは続いたそうです。その梅村さんが選んだ句のなかには
「むきあって同じお茶すするポリと不良」

小学生からの遊び仲間の友には卒業の寄せ書きに「がんばれ ふんばれ されどいばるな」と残したそうです。気の利いた言葉を残していますね。

少年の心持ちを詠った句に
「好きだからつよくぶつけた雪合戦」
とても心情が伝わります。

亡くなる前年に作った句は辞世の句ともいえます。
「花道に降る春雨や音もなく」
彼の遺した俳句を通して彼の人生観や人に対しての思いやりなどが見えてくる素晴らしい本でした。

風天 渥美清のうた (文春文庫)

風天 渥美清のうた (文春文庫)