松井冬子展〜横浜美術館

去年の秋だったか冬だったかテレビで日本画家の松井冬子さんが紹介されて、その美貌に釘付けになりました。そんな美しい人が描く絵がまた衝撃の狂気が漂う絵なのです。
公立美術館で開催される初めての大がかりな個展。彼女の描く世界を少しでも感じたいと観る私もちょっと緊張しての来館です。

この展覧会のポスターになり副題「世界中の子と友達になれる」にもなっている絵です。彼女は幼い頃友達も多く世界中の子と友達になれるという喜びと期待に胸膨らませます。でも、成長するにつけその難しさを感じます。世界中どころか身近なところでも友達をつくるのは難しい、その心の痛みをずっと持ち続けているのです。
全くの私の絵を見ての感想ですのでそこは片寄った解釈の点はご容赦いただきたいのですが、美貌と才能を持ち合わせた彼女は周りからは随分嫉妬されたのではないかと思います。心を友に寄せても実は友はそれほどに思っていない、妬みさえ言葉の端々に感じられる。同性からだけではなく男性からも。
「世界中の子と友達になれる」という平和なタイトルに反して、少女の足の指からは血が流れており、揺りかごは寂しげに置かれています。上部は満開の藤の花ですがその先の黒いところはミツバチです。この絵を見ていると悲観的な将来を想像させ暗い気分になってしまいます。ただ少女が左端に置かれていることにより、この先に何かを見つけるのかと期待も持ち、それが救いでありました。

その他の展示されている絵の数々。横たわる女性の胸や腹が裂け内蔵がはみ出している、また内蔵をドレスのように纏っている女、背中の湾曲した犬などその恐怖と狂気は何を意図している? 不思議と嫌な感じは受けないのです。それが松井さんの理性なのでしょうか。

子宮をモチーフとしたり、長い黒髪、はみ出されて子宮の中の胎児など、女性であることをすごく強調しています。これは女性であることを疎ましく思っているのか、いやいや賛歌なのか、ひょっとしたら男性への怨念なのか。それは謎として残りました。
今までは心の痛みをはき出しているような絵ですが、そんなことを超えて幸せな精神状態になったときには彼女はどんな絵を描くのでしょうか? それを是非見てみたいと思います。

横浜美術館のHP
http://www.yaf.or.jp/yma/jiu/2011/matsuifuyuko/