TDC建築セミナー 「新国立競技場の木材使用」 その二


木材を使用して手がけた作品は海外にもあります。そのうちの1つ、フランス ブザンソンに建つ音楽ホール、現代美術館、音楽学校の複合的文化施設ブザンソン芸術文化センター」。古いレンガ倉庫を残して、全体をひとつのグリーンリーフ(屋上緑化)でつないで、構造には鉄骨の柱と木の梁を組み合わせています。木材を使うに当たって日本とフランスの木材の考え方に直面。日本は養生文化。屋外に積み上げられた木材には必ずブルーシートで覆って雨から守りますね。ところがフランスは雨が降ろうが嵐が来ようが野ざらし。養生するなんて考えは無いわけです。当然のごとくに木材は雨がしみこんで汚れとなり残ります。内装に使用した木材は汚くて、完成した当初は見るに付け不機嫌な気分になったそうです。ところが数年経つとその木材も色が加わり汚れも加わり、雨に当たられた汚れは目立たなくなりました。お陰で最近は不機嫌にならないで済んでいますと笑ってお話されました。
確かに「養生する」は日本の大工さんのきめ細かな心遣いの表れですものね。



本日のセミナーのタイトルになっています「新国立競技場」についての話になります。奈良 法隆寺五重塔の屋根、庇ですが内側はご存じのように木を使っています。その木を内緒で少し切って調べた人がいましてそれで驚いたことには使用されていた木はすでにその時で樹齢350年だったそうです。木材は1400年もつと言われています。そんな事実も隈さんが木材を使う理由でもあるのでしょう。
新国立競技場で使用する木材は30cm(正確な数字はおぼろげでゴメンナサイ)角の集成材。このサイズはどこにでも流通しているサイズです。(大きな工場でしか作れないものではなく、きっと小さな材木屋さんでも作れるのでしょう) 従って安い材料でコストもかかりません。隈さんの案が決定して以後、全国からうちの木をつかってくださいと申し出が多数届いて、お爺ちゃんお婆ちゃんから家の庭の木をという申し出もあるそうです。日本各地の木を使う予定で関東大震災で被害を受けた地域の木ももちろん使います。国民の皆さんが参加するスタジアム建築になると隈さん自身も希望が膨らみますね(皆さんからの希望を手紙でもメールでも送って欲しいと仰っていました)。
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新国立競技場の第2回目コンペを制したのは、隈研吾+梓設計+大成建設案でした。ザハ案の後、新たに仕組み直された本コンペでは、関係者から国産材利用が期待されていました。そのため、これまで国内外で木を多用した建築を発表してきた隈研吾氏に、この国家的プロジェクトが託されたのは、当然の帰結だったように思われます。 熊本地震被災地で県産材を使った木造仮設住宅が採用されたように、今や、建築界における過去50年間の木造暗黒時代に終止符が打たれようとしています。そのシンボルともなる本設計案では、構造材や内装材に、木材がどのような方法で使用されるのか、その効果は、など隈研吾氏に直接お話をうかがいます。

コンクリート・鉄筋の寿命は200年、かたや木の寿命は1400年と言われています。そして日本は木を使うのが一番上手い民族です。不燃の技術も進み今後の建築には木材に新しい未来が開けるような気(木)がしますね。そして森も生き返る。川も、その水も、そして海も。
新国立競技場には沢山の木を植栽に使いますが、それはメンテの掛からない野の木を、そして土の量を限定してあまり大きくならないように。大きく育って競技場が隠れちゃうなんてないように(笑) 渋谷川を復元して木々の間を流す、そのスケッチも見せていただきましたが、、、都会の中に、しかも競技場に癒される空間です。

さて、みんなが関心のある聖火台について
それは報道されているようにコンペの中に項目としてなかったのです。それはつまり開会式のプランナーが決めること。今年のリオオリンピックでも聖火台は街の中に出来るそうです。そのプランナーが誰になるか決定するのは開会の一年前、そしてそのプランで聖火台の場所が決まるわけです。例えばスタジアムの中に設けることになってもそれで木材が燃えてしまうことは無いとはっきり仰っていました。

聖火台は開会式のプランナーに決定権があることは納得できます。聖火台点火も演出ですもの。

さて、その演出家ですが、誰になるのでしょうね? 私的には宮本亜門さんを一押しします。若い感性で、すっきり短めでお願いしたい。
ひょっとして宮藤官九郎さんもあり得る? コメディチックになりすぎ?、、、、でも楽しいかも。