茶道稽古 口切(くちきり)

         口切や南天の実の赤き頃  漱石

と詠まれているように、口切の茶事は木々の実が色づく初冬の十一月頃、炉開きと同じ時期に催されます。
そもそも「口切」とは「茶壺の口を切る」ということで、八十八夜前後に摘んだ新茶が茶壺に詰められ、それを炉開きの頃に封を切る茶事です。茶事の中でも式正(しきしょう)です。亭主も客もそれなりの心構えを必要とします。
いまだかってそのような格式ある茶事には招かれたことはありましぇ〜ん。そこで先生がせめてもお稽古だけでも体験しましょうということで、このお稽古になりました。

写真左が茶壺。床に飾り付けられております。中の写真は葉茶じょうごにのった口切道具(薄茶・濃茶を入れる棗、刀、印肉、判子、のり板、紙)、そして御茶入日記(おんちゃいりにっき 茶壺に詰められた濃茶、薄茶の名が書かれている)。客はこれを順次拝見していただきたい濃茶を相談し所望します。濃茶は大体3種ほど入っています。PCのマウスぐらいの大きさの紙袋に茶葉が詰まり茶銘が書かれています。
写真右はいよいよ茶壺の封を小刀で切り開けていくところです。この写真は本よりスキャンしました。自分がお稽古しているときは撮せませんので。
所望のあった茶葉を取り出し、薄茶となる詰めも出し、後はまた紙にのりをつけ封をして判を押します。
こうして出された茶葉は茶臼で挽きます。挽きたてのお茶をいただく贅沢、まさに茶事の中の茶事ですね。


お稽古での茶壺は13年ほど前に先生がお茶屋さんに詰の茶、濃茶3種を入れてもらっていた年代物(笑)です。その後先生は病気されたりで、すっかりその存在を忘れていらしたと思います。
先生もさぁ〜て、何が出てくるかっ!と。(うちの先生は案外お茶目さんです) 何か虫でも出てくるかっ!と、身を構えましたが、開ければお茶の良い香りがぁ〜。地下のお道具倉庫に保管していた所為か、香りは何の遜色もありません。虫も出てきませんでした。さすが茶葉はほうじ茶のように茶色くなっており、使用しませんでしたが(笑)
こういうお点前はそうそう出来ることではありませんので貴重なお稽古となりました。