2011年9月の俳句

唐黍(とうきび)の粒と抜けたる乳歯かな

子供の頃トウモロコシをかじったらぐらついていた乳歯の前歯がころっと抜けました。そのことを思い出して作句しました。季題は玉蜀黍。傍題として唐黍・もろこし。


左向け左に揃ふ芒(すすき)かな

芒原といえば、こちらでは箱根仙石原が有名です。入れば背の高さほどあって芒の海に入ったようです。この句はそんな大きな景ではなく、川端の芒で風に身を任せ風の吹く方向に揃っている様子です。ちょっとユーモラスな気分で。季題は芒。


秋灯下(しゅうとうか)古き恋文繙きて

季題は秋灯。秋の灯は春の灯の明るく艶な感じとは違い、懐かしさと落ち着きと静かな感じがします。どうもロマンチックな気分になって昔の恋など思い起こしたりします。
そりゃラブレターも沢山もらいました。どのラブレターがどの人からのものか分からなくなるくらいに、、、(ウソばっかし!笑)。


名月や照らす棚田の数ありて

季題は名月ですが、こういう大きな題は作るのに大変です。昔より詠まれている句も沢山ありますし。
3年ほど前の夏、友人と長野の姨捨の棚田を訪れました。思った通りの風景でのんびりと棚田を廻り心癒やされる旅でした。その時に姨捨は月の名所と知りました。観月会のイベントも行われているのです。ああ、この棚田に月が映れば美しいでしょうねと思いました。その景を頭に描いて詠みました。


焼けた肌想い出残す秋の海

澄み切った空に深い色を湛えた秋の海は夏の海とはまた違った海ですね。あの夏あの海での想い出は焼けた肌が覚えている、秋の海になっても。季題は秋の海。